【第37回すばる文学賞受賞作!】薬学部の学生・久野は、育毛と油脂の関連を研究する江藤教授に助手を任命され、かつての教え子である永田は乾性油によって人を魅了する光り輝く艶を頭部に作り出すことができた。久野は、永田の勤め先の塾で不思議な力を持つ女子中学生の荻と出会う……。常軌を逸したエネルギーで全選考委員を圧倒し困惑させた、すばる文学賞史上、最大の問題作。「毛」をめぐり、不思議な力を持つ少女と錬金術師が暗躍する、髪と神の支離滅裂で命がけの戦いがはじまる。
ということで、金城孝祐さんの『教授と少女と錬金術師』を読んだ。(Kindleもある)
話の筋に目立ったものはないのだけれど、不思議と読ませる細部を持っている。ぶっちゃけラノベ的などたばた・コミカルさな状況設定に、おっさん臭さを追加して、化学的な語彙を加味した感じ。
しかし、この全体的なグロテスクさと、時々顔を見せる笑ってしまうような極端な状況、主人公の謎の順応性を前にすると、アニメ・マンガ・ラノベの類に非ラノベ読者が感じているであろう「胡散臭さ」みたいなものが逆照射されて、なんかこう身につまされる?ところがある。
……と好意的に受け取ったのだけど、筆者のブログをさくさく見てみるとニコ動の紹介サイトと化していたので、《逆》照射とは言えず、単に自己照射していただけなのかもしれない。
とりあえず、冒頭すぐに「LOVE&JOY」を歌いながら風呂にはいるバー店員(女性)が出てくるので、読めばいい。
いいから、騙されろ。
まともに感想を言うことのできない本にもかかわらず、朝日の書評がかなり頑張っている感じがしたのでリンクを貼ります。
書評:教授と少女と錬金術師 [著]金城孝祐 - 内澤旬子(文筆家・イラストレーター)
こんなにまじめに感想を書いたら負けな気がする。
この人は受賞後、小説を書くことができないでいるそうだが、この小説で書いたラノベ的破天荒さを再度用いるだけでは井戸を枯らしてしまうだけなので、その井戸を前にして腕組みしているところなのだと思う。
悩みの余り毛が抜けないか心配だったが、著者近影を見たところふさふさなので余計なお世話だったようだ。
あと若干Amazonの表紙画像は若干詐欺的な要素が入っている。届いて思わず毛げんな顔をしてしまった。