2015年3月16日月曜日

金城孝祐『教授と少女と錬金術師』

 

【第37回すばる文学賞受賞作!】薬学部の学生・久野は、育毛と油脂の関連を研究する江藤教授に助手を任命され、かつての教え子である永田は乾性油によって人を魅了する光り輝く艶を頭部に作り出すことができた。久野は、永田の勤め先の塾で不思議な力を持つ女子中学生の荻と出会う……。常軌を逸したエネルギーで全選考委員を圧倒し困惑させた、すばる文学賞史上、最大の問題作。「毛」をめぐり、不思議な力を持つ少女と錬金術師が暗躍する、髪と神の支離滅裂で命がけの戦いがはじまる。

ということで、金城孝祐さんの『教授と少女と錬金術師』を読んだ。(Kindleもある)

話の筋に目立ったものはないのだけれど、不思議と読ませる細部を持っている。ぶっちゃけラノベ的などたばた・コミカルさな状況設定に、おっさん臭さを追加して、化学的な語彙を加味した感じ。
しかし、この全体的なグロテスクさと、時々顔を見せる笑ってしまうような極端な状況、主人公の謎の順応性を前にすると、アニメ・マンガ・ラノベの類に非ラノベ読者が感じているであろう「胡散臭さ」みたいなものが逆照射されて、なんかこう身につまされる?ところがある。

……と好意的に受け取ったのだけど、筆者のブログをさくさく見てみるとニコ動の紹介サイトと化していたので、《逆》照射とは言えず、単に自己照射していただけなのかもしれない。

とりあえず、冒頭すぐに「LOVE&JOY」を歌いながら風呂にはいるバー店員(女性)が出てくるので、読めばいい。
いいから、騙されろ。


まともに感想を言うことのできない本にもかかわらず、朝日の書評がかなり頑張っている感じがしたのでリンクを貼ります。
書評:教授と少女と錬金術師 [著]金城孝祐 - 内澤旬子(文筆家・イラストレーター)
こんなにまじめに感想を書いたら負けな気がする。


この人は受賞後、小説を書くことができないでいるそうだが、この小説で書いたラノベ的破天荒さを再度用いるだけでは井戸を枯らしてしまうだけなので、その井戸を前にして腕組みしているところなのだと思う。
悩みの余り毛が抜けないか心配だったが、著者近影を見たところふさふさなので余計なお世話だったようだ。

あと若干Amazonの表紙画像は若干詐欺的な要素が入っている。届いて思わず毛げんな顔をしてしまった。

2015年3月11日水曜日

3.11

大学院生なので、いっちょ「教養ある読書」をしようかと最近は、ちくま日本文学全集(文庫・現代仮名遣い!)とか読んだりしている一方で、まぁ大江健三郎くらい読んどくか――と岩波文庫の『大江健三郎自選短編』を開いています。
(ちなみに、最近買った小説は、我らが先輩・森田季節の『ストレンジガールは手のひらで踊る』で、最近読んだ本は吉田秋生の『BANANA FISH』と辻村深月の『冷たい校舎の時は止まる』です)

というところで、大江健三郎が震災の節目に行った会見要旨があったので貼っておきます。
http://blogos.com/article/107525/
原発をどうにするにしろ(推進するにせよ、順次廃絶していくにせよ)、原子力に対する興味は失わずにおきたいところです。どっちに転んでも、原子力に関する知識は必要で、ますます技術を磨かねばならないことは確かですから。
辻村深月の小説がそうであるように、一つの胸を抉る出来事は、恐らく一生収束することがない。
http://www.asahi.com/articles/ASH2Q7QW4H2QUGTB00M.html


***

震災直後、最も心打たれた文章は作家・冲方丁さんの「3・11後のSF的想像力 10万年後のSF」でした。被災当時の状況、避難の経緯、避難先での思いなど綴る中で、ひたすらにほとばしっているのは、「怒り」でした。具体的な誰かに対するものではない「怒り」。
「怒り」を持続させることほど難しいことはありません。
辻村深月の小説がそうであるように、人は忘れたがるようです。出来事は簡単に収束しないにもかかわらず。(まぁ、自分もそうなわけですが)

……と、辻村深月の話になってしまいました。

件のエッセイの雰囲気が伝わるインタビュー↓
「こんなんで原稿を書けなくなるのかと思うと許せなかった」作家/被災者 冲方丁<インタビュー「3.11」第10回>http://getnews.jp/archives/174349

2015年3月3日火曜日

【消費社会論勉強会】ゾンビみたいにショッピングモールを散策するオフ【番外編】

最近、消費社会論勉強会というのを、出町柳はイベントスペースのGACCOHで催しています。
いつも議論だけでなく、雑談も捗るといいますか、結構盛り上がっているのです。
その消費社会論勉強会、次回は第五回で、日付は3月28日。→[TwiPla] 【3/28】消費社会論勉強会第5回@GACCOH 
毎回テーマを設けて本を読んでいます(未読の方でも参加いただけます)。今回は「食」です(詳細はリンクへどうぞ)。


その約一週間前に、ショッピングモールをまわりながらショッピングモールについての本を読む企画を考えています。(こちらの日付は3月22日。お昼は13時からの予定です。)
東浩紀『思想地図β1』、東浩紀・大山顕『ショッピングモールから考える』、速水健朗『都市と消費とディズニーの夢』、谷口功一『ショッピングモールの法哲学』辺りを参考文献として、実際に歩いてみよう!というものです。
基本的には、ゾンビのようにだらだらと歩いて、だらだらと益体のない話をするという回になるかと。

場所は京阪沿線のイオンモール桂川(ちかいですからね)。
(ぶっちゃけ中身は今のところ未定です。もしかしたら、レジュメ作るかもしれません)


興味がある方はコメントにその旨を書くか、ツイッターにリプライしてください。
このフラヌールとは別に、ショッピングモールをテーマにして勉強会もしたいなとは思うんですけどね。


以上、告知でした。

追記(3/13)です。
東浩紀・大山顕『ショッピングモールから考える』のレジュメを作ったので当日持っていきます。